⚡古いリチウムイオン電池が特に危険な理由
古いリチウムイオン電池(LiB)は、内部の劣化が進行することで発火や熱暴走のリスクが著しく高まります。特に膨張や異常な発熱といった目に見えるサインがある場合は、使用を直ちに中止し、適切な方法で廃棄することが最重要な発火防止策となります。
ここでは、古いリチウムイオン電池が発火する特有の原因と、家庭で実践すべき最も重要な対策を解説します。
リチウムイオン電池は、使用年数や充放電回数が増えるにつれて、内部の化学物質や構造が劣化し、熱暴走を引き起こしやすい不安定な状態になります。
1. セパレーターの劣化と内部ショート
電池の内部では、正極と負極が「セパレーター」という薄い膜で隔てられています。経年劣化や繰り返しの充放電により、このセパレーターが損傷したり、微細な穴が開いたりします。
この損傷箇所を通じて、デンドライト(リチウム金属の針状結晶)が発生し、内部でショート(短絡)が起こりやすくなります。これが急激な発熱の直接的な原因となり、熱暴走と発火につながります。
2. 電解液の分解とガス発生(膨張)
電池が劣化したり、高温にさらされたりすると、内部の電解液が分解し、可燃性のガスを発生させます。このガスが外部に逃げ場を失うと、電池パックが膨らむ「膨張」という現象が起こります。
膨張は、電池内部の不安定さが限界に達していることを示す危険なサインです。膨張した電池は、わずかな衝撃や圧迫で内部ショートを起こし、発火する可能性が非常に高くなります。
3. 内部抵抗の増加と異常発熱
劣化した電池は、電気抵抗(内部抵抗)が増加します。充電や使用時にこの抵抗が増すと、ジュール熱として熱が発生しやすくなります。この熱が熱暴走の引き金になることがあります。
⚠️最優先でチェックすべき「異常の兆候」
古いリチウムイオン電池は、以下の異常が見られた時点で使用を中止し、直ちに安全な場所に隔離しなければなりません。
| 異常の種類 | リスクレベル | 対処法 |
| 膨張(バッテリーがパンパン) | 極めて危険 | 使用禁止、発火の可能性が高いため、すぐに隔離。 |
| 異臭(焦げ臭いや甘酸っぱい匂い) | 非常に危険 | 内部で電解液が分解し、ガスが漏れているサイン。換気し隔離。 |
| 異常な発熱(充電時など) | 高 | 充電を中止し、冷却する。原因を特定できない場合は使用を避ける。 |
| 変形・破損(へこみ、割れなど) | 高 | 内部ショートの可能性があるため、使用を中止し絶縁。 |
🚫古い電池の発火を防ぐための具体的な対策
古いリチウムイオン電池を扱う際に特に重要なのは、「継続使用を避けること」と「適切な廃棄を徹底すること」です。
1. 満充電・空の状態での長期保管を避ける
古い電池を満充電のまま放置すると、内部の電極に過度な負荷がかかり、劣化が加速します。逆に、完全に放電した空の状態で放置するのもセルの損傷につながります。
適切な保管残量: 30%〜50%程度の残量で保管するのが理想的です。
2. 充電時は特に目を離さない
古い電池は、充電中に発熱や膨張といった異常を起こしやすくなります。
可燃物の近くを避ける: 充電中は周囲に可燃物(紙、布など)を置かない。
目の届く場所で: 就寝中や外出中の充電は絶対に行わない。異常に気付くのが遅れると大火災につながります。
3. 早めの「絶縁」と「正規ルートでの廃棄」
古い、または異常のあるリチウムイオン電池は、一般の不燃ゴミとして廃棄すると、収集車や処理場で圧迫され発火する危険があります。
絶縁処理: 廃棄前に、電池の端子部分(金属部分)をビニールテープなどで完全に覆い、ショートを防ぐ****「絶縁処理」を必ず行いましょう。
回収場所: 自治体の指示に従い、家電量販店や役所などに設置されているリサイクルボックス(JBRCの協力店など)を通じて回収に出してください。
💡まとめ
古いリチウムイオン電池の発火防止の鍵は、異常の早期発見と正しい廃棄にあります。
| 行動 | 理由 |
| 異常(膨張、発熱、異臭)を見つけたら使用禁止 | 内部の化学的な不安定性が限界に達している****サインだから。 |
| 廃棄前は必ず端子を絶縁 | 金属との接触によるショートを防ぎ、収集・処理中の発火を防ぐため。 |
| 正規のリサイクルルートで廃棄 | ゴミ収集車や処理施設での重大な火災事故を防ぐため。 |
安全は日頃の意識と点検から生まれます。身の回りの古いモバイルバッテリーや電動工具のバッテリーを今一度チェックしてみてください。